電気」は非常に便利なものである一方、非常に危険なものでもあります。
そのため、仕事として電気を扱う者には専門的な知識が求められますし、またその専門的な知識と技術が確かであることを認める資格が求められます。
電気に関わる資格はいろいろありますが、今回はその中から、「電気主任技術者」について取り上げます。
なお「電気主任技術者の資格」「電気主任技術者の試験」については別記事で解説します。そのためここではまずは「電気主任技術者とは何か」「電気主任技術者の仕事とは」「電気主任技術者の資格の概要」「似た職業との違い」などの、「電気主任技術者とは何か」という基本について解説していきます。
1.電気主任技術者とは
電気主任技術者の資格とは、ごく簡単にまとめるのであれば、「事業用の電気工作物の、維持・運用に携わり、またその保安を行える資格である」と言えます。
電気主任技術者の資格を持っていれば、電気設備の保安官として活躍できます。
内容に多少の違いはあれども、電気工作物には「安全を確保する義務」があります。電気事業法第42条第1項及び第4項によって、定期的に点検をすることが定められています。
なお、事業用の電気工作物は電気主任技術者しか行うことができません。このため、事業用の電気工作物を運営していくうえで非常に重要なキーマンであると言えます。
また、事業者が電気工作物を設ける場合、電気主任技術者を選任しなければならないと定められています。
このように、電気工作物を運用するうえで欠かすことのできない資格職であるため、電気主任技術者は社会的にも高く評価されています。特に同じ業界にいるならば、電気主任技術者は「目指すべき資格職のひとつである」と考える人が多いことでしょう。
2.電気主任技術者の仕事
電気主任技術者の活躍の場所は、多岐にわたります。「電気に関わる場所」として真っ先に思いつくのはおそらく発電所や変電所などかと思われますが、それ以外にも、工場やビルなどで活躍することもあります。
なお詳しくは後述しますが、電気主任技術者には1種・2種・3種の種類があり、それぞれで扱える事業用電気工作物が異なります。第2種は第1種の、第3種は第2種の下位資格であるため、第1種がもっとも多くの事業用電気工作物を扱えます。
発電所でもビルでも工場でも、電気の監督と保安が主な業務となります。
たとえばビルでは、一般的にはビルの建物の保安と維持を行うことが求められます。主な業務として、蛍光灯やブレーカーの点検があります。エレベーターなどの点検も必要になり、これも電気主任技術者の仕事の範疇ではありますが、そのような大型で専門的な機械に関しては専門業者に依頼するため、確認程度でしょう。また、場合によってはブレーカーの増設などの確認を行い、必要があれば電気屋などに打診します(直接自分たちで作業することはあまりありません)。
ちなみに工場の場合はもう少し範囲が広くなります。工場の場合は常に設備が増設・削減が行われる可能性が高いため、それらの維持・管理に努める必要があります。特に事業用の三相電力などを使用した場合、電力の不平衡などが発生しないかの確認も必要です。
3.電気主任技術者の資格
電気主任技術者の資格の難易度についても簡単に解説しておきましょう。
電気主任技術者の資格には、第1種・第2種・第3種の3種類があります。
第1種ではすべての事業用電気工作物を、第2種では電圧17万ボルト未満までを、第3種では電圧5万ボルト未満まで(※出力5000キロワット以上の発電所以外)を扱えます。
このため、第1種は第2種の、第2種は第3種の完全上位資格です。
合格率は、年度によって違います。
ただ第3種の場合はおおむね10パーセント前後、科目合格は30パーセント前後でマークシートのみの試験です。
第2種の場合はマークシートの1次試験の合格率が50パーセント前後で、記述式の2次試験の合格率が10パーセント~25パーセント程度であり、年度による合格率のばらつきがやや多くみられます。
第1種も第2種と同じく、マークシート式の1次試験と記述式の2次試験に分けられます。1次試験の合格率は30パーセント前後、2次試験の合格率もほぼ同じくらいですが10パーセントを切った年もあります。
なお、どの試験にも「科目合格」があります。
難易度に関しては個人の資質・学んできた学問によって違いがあります。
ただし、電気主任技術者の認定校とされた学校において、単位を取得していれば取得は非常に容易です。
TAC「電気主任技術者」
https://www.tac-school.co.jp/kouza_denken/denken_guide_nanido.html
一般社団法人電気技術者試験センター「第一種電気主任技術者」
https://www.shiken.or.jp/situation/s-chief01.html
SAT「電験二種(第二種電気主任技術者)の難易度・合格率とは?一次試験・二次試験の攻略法」
https://www.sat-co.info/blog/2syudennkisyunin200003/
4.似た職業との相違点
最後に、「似た職業との相違点」について取り上げていきます。取り上げるのは、「電気主任技術者と電気工事士の違い」「電気主任技術者と電気保安技術者の違い」です。
4.1電気主任技術者と電気工事士の違い
電気主任技術者と電気工事士は、しばしば混同して語られます。また明確に分けきることがなかなか難しいものでもあります。ただこの2つの性質・性格の違いをみれば、違いはわかりやすいでしょう。
電気主任技術者は「事業用電気工作物の、保安・監督・運用を主な仕事とする職業」です。
対して電気工事士は「電気工作物の工事を主な仕事とする職業」です。
電気工事士は文字通り「工事」が仕事の主体となりますが、電気主任技術者は保安・監督などが仕事の主体となります。電気主任技術者は事業用電気工作物の保安や監督を任務としますが、電気工事士の仕事は「電気関係の工事」であるため扱うものは必ずしも事業用電気工作物に限られません。
なお、電気工事士の資格取得にあたっては、電気主任技術者の資格(第1種~第3種)を持ってさえいれば、電気工事士の筆記試験は免除されます。持っているのが「電気主任技術者の第3種」の資格であっても、第1種電気工事士の筆記試験も受ける必要がありません。
ただし、これをもって、「電気主任技術者は電気工事士の資格の完全上位である」とまでは言えません。
何度か繰り返していますが、電気主任技術者はあくまで「保安・監督などを主な任務とする仕事」であるため、「工事」は仕事には入りません。そのため、たとえ電気主任技術者の資格を持っている人間がいたとしても、電気工事士がいなければ工事はできないわけです。
またこれを反映するかのように、電気主任技術者を持っていることで免除される電気工事士の試験は「筆記試験」にだけに限られ、実技試験はまた別に受ける必要があります。
4.2電気主任技術者と電気保安技術者の違い
まず初めに解説しますと、「電気主任技術者」と「電気工事士」はある意味では同じくくりですが、「電気保安技術者」はまったく意味が異なります。
電気主任技術者と電気工事士はどちらでも両方とも国家資格ですが、電気保安技術者という資格は存在しません。
では何をもって「電気保安技術者」と言っているかといいますと、これは「電気に関わる工事を行うときに、その保安を行う責任者」のことなのです。明確な法律用語ではありませんが、おおむね、「電気主任技術者や電気工事士の資格を持っているか、それと同等程度の知識を持っている者が務める監督業」と解釈されます。
はっきりとした定義がないためしばしば混乱を招きますが、このように考えておけば問題はないでしょう。実際の運用・採用については、対象機関に問い合わせを行ってください。
ここまで、簡単ではありますが「電気主任技術者とは何か」について解説していきました。
次回は「電気主任技術者の試験」について解説していきます。