電験三種とは|
第三種電気主任技術者について試験の難易度や仕事内容について徹底解説!

2024年01月17日
電験三種とは|第三種電気主任技術者について試験の難易度や仕事内容について徹底解説!

第三種電気主任技術者は、電験三種とも呼ばれる電気の国家資格です。取得することで、発電所や変電所、工場やビルなどに設置されている電気設備の保守・管理業務に従事できます。

電気主任技術者の資格は一種から三種に分類されているのが特徴です。そのため、一種・二種と比べて三種はどう違うのか、試験はどのように実施されるのかといった情報を集めておきましょう。

この記事では、電験三種の取得後にできる仕事内容や試験の難易度を詳しく解説します。試験日や受験資格などもご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

1. 電験三種とは

はじめに、電験三種がどういった資格なのか概要や一種・二種との違いを解説します。仕事内容を含めて、資格の全貌をみていきましょう。

1.1 電験三種の概要

電験三種は、正式名称「第三種電気主任技術者」と呼ばれる資格です。電気事業法にて定められた国家資格で、取得すると電気主任技術者の業務に従事できます。

電気主任技術者の業務は、主に電気設備の保守・管理です。発電所や変電所、ビルや工場といった建物に設置されてある電気設備に異常がないかを確認します。

また、電気設備の保安・管理業務は、電気主任技術者試験の合格者しか従事できません。そのため、電験三種の取得によって従事できる業務は「独占業務」となります。

1.2 電験一種、二種との違い

電気主任技術者試験(電験)は、第一種から第三種に分類されている資格です。電験三種と電験二種・一種は取り扱える電圧の大きさが異なります。

それぞれで取り扱える電圧の大きさは、以下の通りです。

区分取り扱える電圧の範囲
電験三種電圧が5万ボルト未満の事業用電気工作物(出力5千キロワット以上の発電所を除く)
電験二種電圧が17万ボルト未満の事業用電気工作物
電験一種すべての事業用電気工作物

表をみると、電験三種が取り扱える電圧の大きさは、一種・二種と比較して低いことがわかります。ただし、高圧受電設備は6,600ボルトで受電しているため、電験三種でも多くの電気工作物を取り扱えるのが特徴です。

現在において電気設備は必要不可欠な存在であり、電気主任技術者の仕事は独占業務でもあるため、電験三種でも需要は十分に高いといえるでしょう。

1.3 電験三種の仕事内容

第三種電気主任技術者は、電気設備の保守・管理が主な仕事内容となりますが、具体的な作業内容は以下の通りです。

  • 電気設備の点検作業
  • 電気設備周辺の清掃作業
  • 電気設備の故障対応

メインとなるのは、電気設備の点検です。重大な事故につながらないよう、電圧や電流、漏れ電流などの計測、ときには設備の電気を止めて絶縁抵抗や継電器の動作テストをおこない、異常がないかをチェックします。

また、屋外に設置されている高圧受電設備に草やツタなどが侵入していないか、電気回路や電気機器にほこりがつもっていないかなども確認し、必要に応じて除去・掃除するのも電気主任技術者の仕事です。

このほか、電気設備が故障した際の対応も行います。電気設備を安全に使用するための作業を全体的に担うのが特徴です。

2.電験三種を取得するメリット

電験三種を取得するメリットは、主に以下の3つです。

  • 収入が安定している
  • 将来的に需要があり、AIに代替されない
  • 独立を狙える

それぞれのメリットについて詳しく解説します。

2.1 収入が安定している

電験三種を取得すると、収入が安定しやすくなります。電験三種を取得し、第三種電気主任技術者として働く人の平均年収は、300万円〜600万円程度です。

第三種電気主任技術者の平均年収は、大きく分けて以下にわかれます。

  • 350万円~500万円
  • 350万円~480万円
  • 400万円~650万円

※求人サイト「求人ボックス」の情報をもとに算出した数字です

ただし、具体的な年収は就職する企業の規模や経験年数などで異なります。就職を希望する企業の月収・年収等は事前に確認しておきましょう。

電気主任技術者の平均年収は300〜600万円が目安となりますが、日本人の平均年収は約458万円です。そのため、電験三種を取得することで、平均以上の年収を安定して狙えるでしょう。

2.2 将来的に需要があり、AIに代替されない

電験三種を取得することで就ける電気主任技術者は、自家用電気工作物の保安・管理業務に携わる仕事です。そのため、電気の需要が途絶えない限り、仕事がなくなることもありません。

また、電気主任技術者の仕事は技術者に付加価値が付く仕事です。資格を取得した技術者でなければ業務に従事できない「業務独占資格」でもあるため、AIに代替されません。

電気主任技術者が点検する高圧受電設備などは、現場によって劣化が進んでいたり設置場所が異なったりします。臨機応変に対応する力が求められる点からもAIでは代替できない理由の1つです。

収入の安定だけでなく、将来的な需要が途絶えないのも電験三種を取得するメリットといえるでしょう。

2.3 独立を狙える

電験三種を取得して電気主任技術者としての経験を積めば、転職や独立でも有利に働きます。独立が上手くいけば、年収がアップするだけでなく自由な働き方も実現できるでしょう。

電気主任技術者の仕事は基本的に現場でおこなうものなので人とのコミュニケーションが必要不可欠です。ただし、一緒に働く人は選べないため、どうしても人間関係の悩みというのはなくなりません。

一方で独立が上手くいけば一緒に働く人も選べるため、ストレス関係の悩みも解決しやすくなります。独立には、電気主任技術者としての現場経験だけでなく、営業能力やマーケティング能力も必要となりますが、十分に独立を目指せるのは電験三種を取得するメリットといえるでしょう。

電気主任技術者として独立するには

3.電験三種を取得するには

電気主任技術者として仕事に従事するためには、電験の合格が必要です。ここでは、電験三種の概要や受験資格などの情報を詳しく解説します。

3.1 電験三種の試験の概要

電験三種は、理論・電力・機械・法規の4科目が出題されます。各科目で問われる知識について、以下の表をご覧ください。

科目詳細
理論電気理論、電子理論、電気計測及び電子計測
電力発電所及び変電所の設計及び運転、送電線路及び配電線路(屋内配線を含む。)の設計及び運用並びに電気材料
機械電気機器、パワーエレクトロニクス、電動機応用、照明、電熱、電気化学、電気加工、自動制御、メカトロニクス並びに電力システムに関する情報伝送及び処理
法規電気法規(保安に関するものに限る。)及び電気施設管理

出典:電気技術者試験センター|第三種電気主任技術者試験「1.試験内容」

https://www.shiken.or.jp/examination/e-chief03.html

電験三種は、各科目で出題範囲が広いのが特徴です。出題内容に関しても科目ごとに異なるため、試験日までに計画を立てて効率よく勉強する必要があります。

3.2 電験三種の受験資格

電験三種には、特別な受験資格がありません。年齢・性別・学歴などに関係なく誰でも受験できます。

3.3 電験三種の合格率・難易度・勉強時間の目安

電験三種の難易度について、過去3年間の合格率を参考にみていきましょう。

実施年度合格率
令和4年度【下期】15.7%
令和4年度【上期】8.3%
令和3年度11.5%
令和2年度9.8%

出典:電気技術者試験センター|試験実施状況の推移「第三種電気主任技術者」

https://www.shiken.or.jp/situation/s-chief03.html

表をみると、電験三種の合格率は例年10%前後で推移していることがわかります。そのため、電験三種は電気資格の中でも難易度が高いとされている国家資格です。

また、電験三種の勉強時間は約1,000時間が目安とされています。勉強時間に関しては個人差があるものの、合格まで長期的な勉強になる資格に変わりないため、電験三種の合格にはモチベーションを維持しながら計画的に勉強する力が必要です。

3.3.1 科目合格制度を有効に使おう

電験三種には科目合格制度が設けられています。科目合格制度は、理論・電力・機械・法規の4科目ある電験三種の試験で一部科目のみ合格した場合、科目合格として翌年度・翌々年度の試験では合格した科目の受験が免除される制度のことです。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター

https://www.shiken.or.jp/examination/e-chief03.html

電験三種は、3年以内に4科目全てに合格できれば試験合格となります。そのため、一発合格が難しいと感じた場合は、科目合格制度を上手く活用するとよいでしょう。

3.4 電験三種の試験日

以下の表は、令和6年度における電験三種の試験日をまとめた表です。

項目詳細
申込期間上期試験:令和6年5月20日(月)~6月6日(木)
下期試験:令和6年11月11日(月)~11月28日(木)
試験日上期試験
【CBT方式】令和6年7月4日(木)~7月28日(日)
【筆記方式】令和6年8月18日(日)
下期試験
【CBT方式】令和7年2月6日(木)~3月2日(日)
【筆記方式】令和7年3月23日(日)
合格発表上期試験:令和6年9月上旬
下期試験:令和7年4月上旬

出典:電気技術者試験センター|令和6年度電気主任技術者試験の実施日程等のご案内

https://www.shiken.or.jp/schedule/pdf/R06denkennittei.pdf

電験三種は、年に2回実施されている試験です。受験方法としては、CBT方式と筆記方式の2種類あります。

筆記方式は、定められた試験日に試験会場で実施する従来の試験方式です。一方でCBT方式は、期間内に試験会場・試験日時を選択して受験する方式で、科目ごとに日にちをわけて受験できます。

申込期間や試験日を確認しつつ、自分に適した方法で電験三種を受験しましょう。

3.5 電験三種の過去問

最後に、過去に電験三種で出題された問題を科目別にみていきましょう。

▼理論の過去問

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター【問題】令和5年度上期試験 第三種電気主任技術者

https://www.shiken.or.jp/answer/pdf/381/file_nm01/T1-R.pdf

▼電力の過去問

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター【問題】令和5年度上期試験 第三種電気主任技術者

https://www.shiken.or.jp/answer/pdf/381/file_nm02/T1-D.pdf

▼機械の過去問

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター【問題】令和5年度上期試験 第三種電気主任技術者

https://www.shiken.or.jp/answer/pdf/381/file_nm03/T1-K.pdf

▼法規の過去問

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター【問題】令和5年度第三種電気主任技術者試験

https://www.shiken.or.jp/answer/pdf/381/file_nm04/T1-H.pdf

過去に出題された問題をみると、科目ごとに出題される傾向が異なることがわかります。そのため、どの科目でも過去問題を繰り返し解いて傾向を掴むことが大切です。

対策する際は、過去5〜10年分を2〜3周反復することを目安に実践しましょう。参考書を併用しながら少しずつ解ける問題を増やすことで電験三種に合格する力が身につきます。

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