電気主任技術者選任が必要な場合や選任の方法について解説します!

2023年12月14日
電気主任技術者選任が必要な場合や選任の方法について解説します!

国家資格である「電気主任技術者(資格)」は、電気を業務として扱う世界に所属しているあるいは就職を希望している人であればよく耳にする資格でしょう。
この電気主任技術者がいなければ、そもそも運営することのできない事業所などはたくさんあります。
今回は、「電気主任技術者の選任」をキーワードにして解説していきます。

1.電気主任技術者の選任が必要な場合

電気の設備保安などを扱う法律である電気事業法(昭和39年法律第170号)の第42条において、「事業用電気工作物を設置する業者は、その工事・維持・運用に関する保安を行うために、保安規定を定め、またそれを経済産業大臣に届けなければならない」と決められています。
そして、その次の電気事業法の第43条において、上記で述べた「事業用電気工作物を設置する業者は、その工事・維持・運用に関する保安を監督させるために、(電気)主任技術者を選任しなければならない」とされています。

つまり、電気主任技術者を選任するのは事業者側の任意の意志によるものではなく、法律によって明確に定められている「義務」なのです。

このため、事業用電気工作物を扱う業者においては全て、電気主任技術者を置かずに運用することは認められていません。

ただこれは、「すべての電気工作物に対して、電気主任技術者を置かなければならない」ということとはイコールにはなりません。

電気工作物は「事業用電気工作物」と「一般用電気工作物」に分けられます。事業用電気工作物は総じて高い電圧を取り扱うことになりますが、一般用電気工作物はこの限りではありません。一般用電気工作物は、600ボルト以下の低圧の電力を扱うことになります。
一般用電気工作物の場合は、もちろん電気主任技術者の選任は必要ありません。
つまり電気主任技術者の選任が必要となるのは600ボルト以上の受電設備であって、それ以下の場合は電気主任技術者の選任は必要とされません。なお、発電所に関しては、一般用工作物として扱われるものの適用範囲は以下の通りです。

太陽光発電……出力50kW未満のもの

風力発電……出力20kW未満のもの

水力発電……出力20kW未満のもの

新潟県「電気工事業について」

表引用:新潟県「電気工事業について」

注意してほしいのは。「事業用電気工作物」の「事業用」ということばには明確な定義があるという点です。
たとえば、「規模の極めて小さい事業事務所」で使われている太陽光システムなどは、「事業として扱っているのだから事業用電気工作物だろう」と考えてしまう人もいるかもしれませんが、「事業用電気工作物」にあたることは基本的にはありません。
「事業所が事業として取り扱っているかどうか」は判定基準とはならないのです。

2.電気主任技術者の選任要件

さて、ここからは「電気主任技術者の選任要件」についてみていきましょう。

電気主任技術者は、「第一種・第二種・第三種」の3つに分けられます。
第一種は第二種の、第二種は第三種の完全上位資格です。そのため、「第一種電気主任技術者か、第二種電気主任技術者か、あるいは第三種電気主任技術者か?」によって、取り扱える内容が変わってきます。

一種……すべての事業用電気工作物を扱える

二種……電圧が17万ボルト未満の事業用電気工作物を扱える(たとえば鉄道の電気設備、大型ショッピングセンターなど)

三種……電圧が50000ボルト未満の事業用電気工作物を扱える。ただし、出力5000kW以上の発電所は除外する(たとえば比較的小規模の工場など)

※第三種電気主任技術者では対応ができない電圧を扱っている工場も当然ある。そのため実際の転職においては、「工場か鉄道か?」などのような見方ではなく、「その施設が扱う電圧や、その施設が求める条件」について確認することが必須

上記のように決められています。
このため、職場によっては「第一種電気主任技術者のみを募集している」「第三種を持っていればOKだが、それよりも上位の資格を持っていてももちろん歓迎する」などのように打ち出しているところもあります。

基本的には上位の資格が必要な職場ほど年収などの条件がよく、活躍の範囲も広くなります。ただし、電気主任技術者は実務経験が皆無であっても受験可能な資格で、取得することもできますが、「実務経験がなければ雇うのは難しい」としている会社もみられます。そのため、「電気主任技術者の資格さえ持っていれば、すぐに採用される」とまでは言い切れません。

なお、電気主任技術者の資格の詳細は、以下の記事もご参考ください。
電気主任技術者資格|分類・合格率・取得方法を解説します

3.電気主任技術者の仕事内容

電気主任技術者の仕事内容は多岐にわたります。「どこに勤めるか」によって業務内容は変わってきますし、また似たような形態であっても職場によって仕事内容は異なります。
ただ、どこの現場においても、電気主任技術者という仕事の特性上、電気の監督と保安が主な業務となります。

なお、電気主任技術者の場合はあくまで「監督・保安」を業務としますから、電気工事そのものには基本的には関わりません。電気の工事を行うのは「電気工事士」であり、電気主任技術者とはまた別の資格(第一種~第二種電気工事士資格など)が必要となります。そのため、電気主任技術者と電気工事士、両方の資格を持っている人もいます。

電気主任技術者の仕事の詳しい内容はこちらをどうぞ。
電気主任技術者とは|電気主任技術者の仕事・資格を徹底解説!

4.電気主任技術者の選任・委託方法

4.1 自社選任

「自社選任」とは、「電気工作物を扱う自社内に電気主任技術者(資格)を持っている人間がいて、その人間のなかから選任する」というかたちをいいます。なおこの自社選任においても、専任や解任の届出書は必要になりますし、電気主任技術者資格を有していることを示すための免状の写しが必要となります。加えて、社員であることを示すための書類も必要です。

4.2 外部選任

外部選任とは、「外部の会社から電気主任技術者を選任すること」をいいます。この「外部の会社」とは、管理会社などをいいます。
外部の人間に電気主任技術者としての監督・保安の業務を担わせるものであり、
①設置者は、電気主任技術者の意見を尊重するとともに、保安を目的として電気主任技術者の指示に従うこと
②また電気主任技術者は、その職務を誠実にこなすことを記した書類をやりとりする必要があります。
また非常に大切な点ですが、電気主任技術者を外部選任で選んだ場合、電気主任技術者は該当の事業所に常駐する必要があります。したがって、「外部選任で1人だけ電気主任技術者を雇い、その人によって電気工作物の監督・保安をしている」というかたちにすることはできません。当然、その電気主任技術者にも休暇などが必要になるからです。

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4.3 外部委託

「外部選任」と一緒なものだと勘違いされやすいのが「外部委託」です。「外部委託制度」とも呼ばれます。これは、「一定の条件を満たしている法人(条件を満たせば個人でもよい)と委託契約を直接結び、かつ外部委託承認申請書が承認された場合」に可能になるかたちです。これが可能になった場合、電気主任技術者を事業所内に常駐させなくてもよくなります。
ただしこの外部委託が可能になるのは、ある程度小規模な事業所のみです。取り扱える電圧や消費電力などに制限があるからです。たとえば、外部委託の条件としては、

自家用電気工作物であること

出力1,000kW未満の発電所、電圧7,000V以下での受電をする設備、電圧600V以下配電線路を管理する事業所

などが挙げられます。
また、「受託事業所から2時間以内の距離に、主たる連絡場所があること」なども条件のうちのひとつです。
出典:経済産業省「電気主任技術者の外部委託」

このように、電気主任技術者は事業用電気工作物を扱ううえでは欠かすことのできない資格職です。難関といわれる資格ではありますが、電気を扱う業界で仕事をしていこうと考えるのであれば、目指すべき資格だといえるでしょう。

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